United States Department of Agriculture
Home 米国農務省について 米国大使館 レポート イベント 連絡先 English
現在地: 日本語ホーム / レポート

Reports


食品の安全な取り扱い

EPA(米国環境保護局)
フレッド・ゲンスナー

日本を含む多くの国では、微生物を原因とする食品由来の疾病が重大な健康問題を引き起こす。1996年には、大腸菌 による世界最大の食中毒が発生した。以来、食肉・食品加工工場や、大人数を対象に食品を提供する施設での衛生慣行の徹底を含め、新たな規制措置が講じられた。また日本では食品の大半が家庭で消費されるため、1997年3月には日本政府が家庭向けに教育目的のパンフレットを作成し、各家庭での食品の安全な取り扱い方も指導した。世界の多くの国と同様、日本でも食品が媒介する疾患は今も根絶の難しい健康問題である。日本では2005年、1,545件の食中毒が発生し、2万7,019人が発症し、7人が死亡した(1)。本稿は食品が原因となる疾患と、家庭における食品の安全な取り扱いに関して議論と検証をしてみたい。

大部分の食品が微生物を含んでいるのは普通であり自然である。それどころか、食品中に意図的に微生物を導入し発酵させることもある。味噌・納豆・ヨーグルトなどの食品は微生物を利用して作られるだけでなく、微生物の作用によりこれら食品の栄養価は高まり、腐敗に対する抵抗も強化される。しかし食品中のたいていの微生物は好ましくない存在である。好ましからぬ微生物汚染の主要な発生源は、土壌・水・空気・昆虫・ネズミ等である。病気を引き起こす微生物は病原体と呼ばれる。食品中の微生物の中で病原体であるものはごくわずかだが、それらの好ましからぬ増加はみな、食品の腐敗をもたらす。さらに、不要な微生物が食品中に多く存在すればするほど、食品によって運ばれる病原体が存在するリスクも高まる。不要な微生物は生産者や製造者が食肉のと殺・解体、食品・加工・流通の際に食品中に持ち込んでしまう場合もあるが、食品が原因の疾患の中には、消費者による食品購入後の保存・調理・取り扱いの不備によって引き起こされるものも多い。

微生物が引き起こす食品を原因とする疾患は、感染または中毒の経過をたどる。感染は生きた微生物の摂取によって起こる一方、食品中毒は食品中または食品上で成長する微生物が作り出した毒素を摂取することで起こる。食品が原因となる疾患を引き起こす多くの毒素は、たいていの微生物が死滅する温度でも分解することができない。また、微生物に汚染された食品の摂取から発症までにかかる時間は、食品を介した病原菌への感染の場合よりも食品中毒の場合のほうが短い。こうした違いを認識することは、食品が原因となる疾病を予防するための戦略・取り組みを実施するうえで重要である。

食品由来の疾病を引き起こすリスクは個々の食品によって異なる。潜在リスクのある食品はいくつかのカテゴリーに分類できる。十分に加熱調理していない食品や生の食品は、加熱調理したもの以上に危険な場合が多い。熱は食品を殺菌する上で極めて有効だからである。食品による疾病のリスクを減らすには、生の食品は、食べる前に可能な限り加熱調理するか洗うようにするといい。淡白な食品、つまり塩や酸を少量しか含まない食品は、微生物の増加に好都合である。また、多くの原材料を含有する食品のほうが疾病を引き起こすリスクが高い。それぞれの原材料に微生物が含まれており、よって病原体を持ち込んでしまうリスクが高まるからである。調理に手のかかる食品もリスクが高い。加工の各段階で、微生物を持ち込んでしまう可能性が発生するからだ。微生物汚染はまた、調理人や調理器具を原因とする場合もある。最後に、意図的に前もって調理した食品、「残り物」の食品も有害な微生物やその毒素を含有する可能性が高まる。バクテリアの急激な増加や毒素の発生を促す温度の下で長い時間が経過している場合があるからだ。

日本では2000年、食品が原因とされる疾病の流行が学校給食施設から発生する場合の危険因子に関するひとつの報告書が作成された。報告書は食品の安全でない取り扱いの慣行を具体的に示している。報告によると、29の事例(46.8%)で汚染された食品が原因と推察され、29例(46.8%)では長期間保存されていた食品が原因と推察された。そのほか、不十分な加熱調理と交差汚染が21例(33.9%)、感染した調理人が9例(14.5%)で見つかっている。研究の対象となった269件の疾病発症事例の中で、原因微生物として特に多かったのは、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌、黄色ブドウ球菌である。このうちサルモネラ、カンピロバクター、大腸菌は食品感染の原因となり、黄色ブドウ球菌は食品中毒の原因となる。こうした事例を考慮すると、食中毒を最も多く引き起こす食品に非加熱品目、または部分的にしか加熱調理されていない品目、生サラダや一部の卵製品が含まれるのは当然といえよう。加熱調理をするか、保存の温度を適切に保っていれば、これらの流行の大半は防げたはずである。十分な高温で調理していれば、食品感染を起こす病原体を殺せたであろうし、保存の温度が適切であれば微生物の増加を防止することができ、ひいては食品中に毒素が発生することはなかったであろう。

有害な微生物、病気の原因となるその毒素は目に見えないし、匂いも、味もしない。ただその一方で、当然ながら食品から腐った臭いがしたら摂取していけないのは当然である。米国農務省は、「Fight BAC!TM」と名づけた食品保全のための4つのガイドラインを打ち出し、消費者に遵守を呼びかけている。以下のガイドラインは、食品調製の各段階で守る必要がある。

・清潔にする――手、調理器具、食器の表面をよく洗う。
・分ける――交差汚染を起こさない。
・加熱する――適切な温度まで上げて調理する。
・冷却する――すみやかに冷蔵庫に入れる。

手を頻繁に洗う。手洗いは、せっけんを使い、温水で少なくとも20秒間行い、食品の汚染を防ぐ。ふさがっていない傷口、感染している切り傷が手にあるときは絶対に食品を扱ってはならない。調理のあいだ、生肉・鶏肉を他の食品と分けておくことも重要である。家禽の肉・卵にはサルモネラ、赤肉には大腸菌、魚介類にはリステリア菌など、食品を媒介とする微生物病原体が含まれていることがよくあるからだ。熱はたいていの微生物病原体を死滅させる。したがって、病原体が死滅する以上の温度で食品を加熱調理すれば、食品を介して広がる感染を防ぐことができる。卵・豚肉・牛ひき肉を含む食品は71°C、鶏肉は82°C、牛肉は63°C以上が望ましい調理温度である。食品が運ぶ微生物病原体の多くは4°C以下では増えない。したがって、冷製食品は4°C以下で保存・提供すること。冷凍食品は冷蔵庫または冷水で解凍する。解凍中は水を頻繁に取り替えること。生鮮食品は室温で2時間(室温が32°Cを上回る場合は1時間)を超えて放置してはならない。

忘れてはならない重要なポイントは、4°Cから63°Cは「危険ゾーン」ということだ。食品が運ぶ微生物病原体のほとんどはこの温度帯で増加する。つまり、食品が危険ゾーンに置かれる時間をできる限り短くすれば、食品によって運ばれる微生物病原体の数の増殖を防ぎ、食品中の微生物毒素の生産を防ぐことができるのである。以上が、家庭内で食物によって引き起こされる病気のリスクを低減するための基本ガイドラインである。

参考資料
(1) 厚生労働省――2006年食中毒・食品監視関連情報
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html
---------------------------------------
フレッド・ゲンスナー博士は、EPA(米国環境保護局)の微生物学者である。2007年には在日米国大使館(東京)の科学研究員(フェロー)を務めた




何をお探しですか?

 米国農産物を
日本に輸入したい
 米国農産物を
日本へ輸出したい
 リンク先を知りたい

USDA Logo